アメリカの工業製品 - 新興住宅

このあたりは昔、一面ジャガイモ畑だったそうで、それが第一次大戦後の開発ブームで、一気に住宅地に変えられた。広大なジャガイモ畑は、ブルトーザーでならされ、ますそこにおびただしい数の道が穿たれた。その開墾があちこちで同時に行われたため、見渡す限り巨大な土煙の山がいくつも立ち上がったという。

そうしてできあがったのは、まさに新興住宅地というのにふさわしく、道路をはさんで、芝生の前庭のうしろに、同じ間取りの同じ大きさの家が、まるで遠近法の構図のように延々とつらなり、その奥行きと広さは、まさにアメリカ合衆国の近代化の象徴という感じがする。

郊外に家を持ち、車でオフィスに通うと言うライフスタイルがこの時代に確立したというのは、今考えても驚きというしかないが、その文化のニューウエーブが、ゼネラルモータズの車に、GEの家電、ファイヤーキングの食器といった、アメリカ工業製品の大傑作をいくつも生み出した。

今このあたりは、史上何回目かの、建築ブームに蹂躙されている。コロナのせいで、人との接触を嫌った都市の住人が、離島や山奥にいかなくても、隔離された生活を確保できるこの地区に集まってきている。それでこのあたりの住宅税は全米第2位になったそうである。