風の無い街

頭の中に自分の街を建設する。建材は言葉。どんな街でも造ることができるが、それが例えば、夢の中でさまよったことがある、見しらぬ街に似ていれば、そこには懐かしい夕暮れの空気が漂うだろう。

ぼくの頭の中の街をあるいてみる。陽気な楽しい人たちにたくさん出会う。一度も合ったことの無い人たちだけれど、僕のDNAが記憶してくれている。遠い昔の、どこかの国の、だれかだ。未知の人との再会はいつでも楽しい。

古今の文学の中で、多くの街がつくられ、いくつもの物語が語られてきた。おびただしい言葉の建築物。そこに生きる人たちは、顔はぼんやりしているが、はっきりとした心と声を持っている。

たとえば、何かの紀行文で読んだ街がとても美しいと思ったとき、よせばいいのにそれを確かめたくて、グーグルビューで訪れてみることがある。そして風のない街をみて失望する。確かめると言うことは、疑うと言うことだ。