2021年1月5日、ニューヨークの郊外にて

今日は不思議と朝日のきれいな日で、まだ薄暗い中を散歩したとき、空にはすでに紫がかった雲が波のように漂い、それが露地を曲がる毎に、雲の縁に陽光が輝き始め、あるときは葉の落ちた街路樹の天をつく鋭い小枝のかなたに、あるときは白亜の屋根越しに、その光を強めながら、やがてその反映が地表を赤く染めていく様子は、とても気持ちの良いものだった。

そんな時間の経過の中で、天と地が一様に、たとえは悪いがこの世の終わりのようなそんな色彩でみたされてときには、一体どうなると思ったが、太陽が昇ってしまうと、結局いつもの平凡な朝の景色にもどってしまって、まるで狐につままれたような気がした。色彩の緊張のあとに、まるで幕をあけたように弛緩が訪れて、その境目がわからなかった。

ここはニューヨークのプレンビュー、ロングアイランドの真ん中にある。マンハッタンまでは、道路が空いていれば車で40分、混んでいれば2時間半の位置にある。細長い島なので、マンハッタンに入るには、三本の高速道路で、四本の橋か一本のトンネルのどれかを選ばなければならない。どれもが飽和しているから、畢竟鉄道をつかうことになる。ここにある駅は沿線で2番目に大きい。

変な疫病がはやったおかげで、マンハッタンの評判は地に落ち、金回りのいい白人から、脱出がはじまったせいで、都市の景観はまったくすさんだものに変わってしまった。一部の地区では、昔の、悪臭のする、街路のシャッターが閉じ、そこには暴力的な落書きがされている、そんな危険な街にかわってしまった。すくなくても、わたしにはそこへ行く用事はない、2021年の1月5日の朝、そんな幸せに感謝した。